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そして私は嘘となる

泥船の上で叫ぶ私を滑稽だと思うかい?
沈みゆく汚泥の中でもがく私を愚かだと笑うかい?
ちっぽけな世界で何も知らない私を可哀相だと嘆くかい?
捨てる程の心もない私を虚しいと蔑むかい?
死にたくないとみっともなく泣く私を意味がないと切り捨てるかい?
いっそのこと私を殺し尽くしてそれが真実だったと騙すのかい?

引き回しの孤独

完璧を是とする愚かしい前提は
無駄という愚者の行為を嘲笑う

ひとつ話をしてやろうと囁いた
無垢な感情など唾棄すべきだと

零よりいでし残骸など虚しくて
その身より零れ落ちる後悔の念

心に巣くう虚無とて求めうるに
ただそれだけのことを信じるか

知るべきものを知らず打ち捨て
流れ出てゆく時間と嘆きを乞う

不可思議妙に耐えず蝕み転がり
それこそが本質だろうにと笑う

 

(初出:2017.9.26)

或る罪人の一幕

君が笑うたびに僕は思い知らされる
君からあいつを奪ったのは僕なのだと
何も知らぬ無垢な手は汚れた僕を浄化するかのようにのばされる
あのね、と舌足らずのお喋りに応える僕は何者だろう
小さな君は僕に絶対の信頼を置き、そして呼ぶ
「おとーしゃん」
握りしめたあたたかい手は僕の罪を浮き彫りにして罪悪感を逆なでる
ぽつり、君は呟く
「おかーしゃん、どこ、行ったの?」
遠いお空の上だよ、とでも僕は言うのだろうか

だから、存在しない。

そう、思い出して。
私が私であった頃、あなたは間違いなくあなたでその腕の中はどんな世界よりも幸せだった。

私が壊したあなたは、私だけを見て好きだよ好きだよとうわ言のように繰り返す。
あなたが私を壊さないのは、あなたが私を憎んでいるから。
壊れてゆくあなたを見る私の悲しみを、罰だと知っているから。
壊して壊して壊しつくす私が、あなたの全てを奪えないと解っているから。

思い出の中にしかいない私は、あなたにどんなに抱かれても空虚のまま。
私の為だけにあるあなたは、つめたくて、からっぽで、なにもない。