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道は『此処』にある

どれ程渇望しても得られないものがあるのだとしたら
どれ程祈念しても理不尽にも踏みにじられるのだとしたら

『此処』から身動きすらできずに私は朽ちてゆくのだろうか

どれ程渇望しても得られないものがあるのだとしても
どれ程祈念しても理不尽に踏みにじられるのだとしても

『此処』にいる私自身のすべての結果なのだから

『此処』に至るまでにした選択の繰り返し
『此処』にたどり着くまでに歩いた道の果て

他の誰でもない私自身が導いたもの

どれ程渇望しても得られないものがあり
どれ程祈念しても理不尽に踏みにじられ
それ自身が私なのだとしたら

私の選ぶべき道は『此処』にしか繋がってはいない

その為にあり
その為におり
その為にいる

私は『此処』にしかいられないのだと、気づいた

そうでないが故に信じるもの

私は『特別』なのだと思っていた

誰だって誰かの『特別』になりたいでしょう
誰だって世界の『特別』になりたいでしょう
誰だって全ての『特別』になりたいでしょう

選ばれし私の未知なる力を解放すべき時がくる
私にしかできないことが待っている
私が『特別』であるが故に苦悩する

ちっぽけな私がなけなしの虚勢を張って立つ
私は『特別』なんだと声を限りに叫ぶ

私は『特別』であるべきだ
私は『特別』なのだから
私は『特別』だと信じていたかった

そうしないと
現実というものに押しつぶされてしまいそうだったから

誰にも見向きもされない石ころなのだと解ってしまえば
ここにいるべき意味すら見いだせなくなるから

私は『特別』なんかではなく
私は『特別』になんかなれなくて
私は『特別』だと思い込むことさえ出来なかった

だからこそ私は
石ころを拾い上げようと思う

私は『特別』にはなれなかったけれど
私の『特別』がいつか見つかると信じているから
そう、信じていたいから

夜中の救いとそれだけが

あなたしかいないのだと縋ってみればよかったのだろうか。と考えてはみるものの、そんなことはできっこないのは自分が一番よく知っている。思えば他人というものに期待しすぎていたのだと思う。自分が自分である為に他人を利用する。それは簡単かつ楽な方法で、それ以外のやり方は知りえなかった。自分の両手は微弱で貧弱で、そう思い込めば何だってできた。心も体も自身と切り離してしまえば楽になった。それは、自分ではないのだと念じればいいだけ。念じなくてもそうあることが普通になってしまえば後は機械のごとくこなしていくだけ。ライン仕事と一緒だ。そうして自分というものを今一度作り上げた先にあったもの。それすら虚構にすぎなくて、それすら自分なのかと解らなくなっていて。朝も昼も夜も一緒になってしまった自分に、あなたは夜中を教えてくれた。
結局、そう、自分は誰かに依存することで存在していたのだ。
あなたしかいないのだと声を上げた所でそんなものは薄っぺらい吹けば飛んでいくようなもので。そうして少しずつ流れ出ていったものは最早自分であったものなのかどうなのかも解らない。解らないことは怖いことだと思っていたが、それもそのうち麻痺してしまった。あなたの為に自分はあるのだと暗示をかけることで心地よい幸福に浸れた。この上なく幸いで天にも昇るような気持ちよさ。それだけが自分を自分たらしめる。それだけが自分がまだ存在するのだと思わせてくれる。それだけが、私、を、

それ故に存在するもの

捨てるのは簡単だ
言葉も夢も愛も心も
いらないと思えばいつでも捨てられる

手に入れるのは簡単だ
彼方も意味も情も己も
必要だと思えばどうにかして手に入れられる

手放せば手に入るちっぽけな物は
真心のように不確かで揺れ続けて

それでもきっと
私にはそれこそが私である証なのだ

考えるだけ無駄なことはいつも、

何故もこう愚かなのだと罵られ
その存在こそが不必要なのだと嘲笑う
意味もないのにここにいることは
塗りつぶした顔から背ける行為と違うのか

何度も言われたその”意味”を
“意味”を”意味”を”意味”を
考えたところでそれこそ”意味”がないことだろうに

ここにある全てはほろほろと零れ落ちてゆく
足場をなくした今はどこへも行けずに嘆く
いるべきではないのはわたしかあなたか

そうあるだけの”意味”を彼らは持ちえない

 

(初出:2018.3.30)